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インテグレーテッド・ケミストリー―マイクロ化学チップが拓く科学と技術―

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出版図書

■体裁:B5判、231ページ
■発刊:2004/03
■ISBNコード:978-4-88231-436-3
■シーエムシー出版

★ 分析・化学合成・バイオ関連技術等の分野において桁違いの性能をもたらす画期的手法「インテグレーテッド・ケミストリー」とは?
★ 新しい産業創成に向けて世界が注目する日本発のマイクロチップ技術の全貌を紹介!
★ 5年間にわたるKASTプロジェクトの集大成を掲載!

【著者】
北森武彦   東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 教授
渡慶次学   (財)神奈川科学技術アカデミー 光科学重点研究室 マイクロ化学グループ グループリーダー
内山堅慈   日本板硝子(株) 情報電子カンパニー 企画開発室 マイクロ化学チッププロジェクト 研究員
火原彰秀   東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 講師
久本秀明   姫路工業大学大学院 理学研究科 物質科学専攻 助教授
佐藤記一   東京大学大学院 農学生命科学研究科 助手
菊谷善国   (財)神奈川科学技術アカデミー 光科学重点研究室 マイクロ化学グループ 研究員
森島圭祐   (財)神奈川科学技術アカデミー 光科学重点研究室 マイクロ化学グループ 研究員
金 幸夫   東京大学 工学部 総合研究機構 助教授

協力
(財)神奈川科学技術アカデミー インテグレーテッド・ケミストリープロジェクト

【序文】
 平成15年の3月に(財)神奈川科学技術アカデミー(KAST)の研究プロジェクト「インテグレーテッド・ケミストリー」が終了した。平成9年に採択され、平成10年から5ヵ年に渡って研究を推進させていただいた。本書はプロジェクトの終了報告書を単行本として残すことを出版社から勧められ、終了報告書に適宜加筆してプロジェクトの記録をまとめたものである。プロジェクトの推進体制や運営などやや生臭い話題も敢えて取り上げたが、単なる記録という意味以上でも以下でもない。
 まだ実に単純に混ぜ合わせることくらいしかできなかったマイクロ化学チップが5年前に比べて複雑さも機能も格段に進化した。この短期間に、原理原則の研究から独自基盤技術を築きあげ、産業技術や社会に役立つ技術、また新しい科学研究への突破口としての見通しまで得ることができるようになった。
何をどうすればよいかの第一フェーズの研究から、すでに明確な目標を実現する第二フェーズの研究に入っている。大学とプロジェクト発の技術から産業を創成することを目標に、さまざまな省庁のプロジェクトが動き出し、そこに企業の皆さんも集まって産官学の連携体制も確立してきた。技術の波及と普及はもちろんのこと、大企業が参入できない小さな初期市場の創成と開拓をも担った大学・プロジェクト発のベンチャー企業(株)マイクロ化学技研も軌道に乗りつつある。こうした産学官連携や地域連携そのものも壮大な産業創成の実験であり、成功を確信しながら多くの方々が努力を続けている。プロジェクトを中心に国内の数グループが集まって開催した研究会「化学とマイクロシステム研究会」がいつの間にか250名を越える学術団体「化学とマイクロ・ナノシステム研究会」に発展し魅力的な活動を展開している。本プロジェクトの成果が新しい科学と産業の創成に寄与し、真に社会と人々の生活に貢献していくことを期待している。
 プロジェクトの立ち上げから技術的また対外的な難問が山積みであったが、KASTと東大のスタッフのまさに反骨精神とも言える気力と努力で独自のScience&Technology を開拓することができた。これを柱にさまざまな分野に展開が始まり、またこの分野のほとんどの主要国際会議や国際論文誌で基調講演や特集に取り上げられ国際的な評価も定着してきた。これらは全てプロジェクトに関わってきたスタッフ全員の努力の結果でありここに敬意と謝意を表したい。また、このプロジェクトを推進するにあたり、前理事長の長倉三郎先生、現理事長の藤嶋先生をはじめとするKAST事務局の皆様のご指導ご支援とご協力、ならびに様々な形でご指導ご助言いただいた方々、共同研究や共同プロジェクトとしてご協力いただいた皆さんと学生諸君並びに企業からの派遣研究員の皆さん、プロジェクトに関連する展開を支えてくださった経済省、農水省、文科省、NEDO、JST、JSPS、農林水産技術会議の関係者各位、IMT社の設立に関わってくださった東大工学部事務局長沢人事掛長と蓼沼社長をはじめとするIMT社の皆さん、そして小職とスタッフ諸氏を支えてくれたそれぞれの家族の皆さんに心より感謝いたします。

2004年3月 北森武彦

【目次】

第1章 総論(北森武彦)
1. はじめに―インレグレーテッド・ケミストリーとは―
2. 研究構想
3. 研究計画の実施とプロジェクトの運営
4. 研究体制―産学官連携と地域連携―
5. 研究の波及と展開―関連プロジェクトとベンチャー設立―
6. 産業創成とベンチャー企業の役割
7. 世界の動向とプロジェクトの位置づけ
8. 技術の動向と研究開発戦略
9. 既に動き出した第二フェーズ
10. 研究成果の概要
10.1 マイクロ化学プロセス技術
10.2 マイクロ流体制御技術
10.3 超高感度検出技術
10.4 化学反応制御
10.5 細胞培養技術
10.6 マイクロ・ナノ加工技術
10.7 マイクロ膜化学技術
10.8 分析システムI:環境重金属分析マイクロシステム
10.9 分析システムII:免疫分析マイクロシステム
10.10 合成システムI:高効率合成マイクロシステム
10.11 合成システムII:大量合成パイルアップシステム
10.12 合成システムIII:マイクロコンビナトリアル合成システム
10.13 マイクロバイオアッセイシステム
10.14 メソ空間化学
10.15 マイクロ界面化学
10.16 マイクロ電気化学
10.17 細胞機能応用デバイス
11. 今後の課題と展望

【第I編 インテグレーテッドケミストリーの基盤】
第2章 マイクロチップ化学プロセスの設計(渡慶次学)

1. はじめに
2. MUOとCFCP
2.1 マイクロ単位操作(MUO)と連続流化学プロセス(CFCP)
2.2 設計例
2.2.1 CFCPの例1:コバルト湿式分析
2.2.2 CFCPの例2:バイオアッセイ
3. まとめと展望

第3章 超高感度検出器(渡慶次学)
1. はじめに
2. 熱レンズ顕微鏡
2.1 原理
2.2 熱レンズ顕微鏡のシステムと性能
2.3 デスクトップ熱レンズ顕微鏡
2.4 パームトップ熱レンズ検出デバイス
3. まとめと展望

第4章 マイクロ加工技術(内山堅慈)
1. はじめに
2. ガラスチップ微細加工技術
2.1 クリーンルームと機器
2.1.1 クリーンルーム
2.1.2 超純水製造装置
2.1.3 スパッタ装置
2.1.4 スピンコーター
2.1.5 マスクアライナー
2.1.6 その他
2.2 チップ作製工程
2.2.1 マイクロ化学チップに用いるガラス基板の仕様
2.2.2 ガラス基板のアニール
2.2.3 ガラス基板の洗浄
2.2.4 Cr/Au成膜
2.2.5 フォトレジスト塗布
2.2.6 露光
2.2.7 現像
2.2.8 エッチング1
2.2.9 エッチング2
2.2.10 フォトレジスト、Au、Cr除去
2.2.11 ガラス基板接合
2.3 マイクロチャネル内微細構造
2.4 3次元配管構造
3. マイクロ化学チップ周辺部材の整備と確立
4. まとめと展望

第5章 マイクロ流体(火原彰秀)
1. はじめに
2. マイクロ多相流の流体特性
2.1 重力と張力
2.2 粘度と流速
3. マイクロ多相流の制御
3.1 物理的手法によるマイクロ多相流制御
3.2 化学的手法によるマイクロ多相流安定化
4. まとめと展望

【第II編 インテグレーテッドケミストリーの応用】
第6章 マイクロ分析化学システム(久本秀明、渡慶次学、佐藤記一)

1. はじめに
2. フローインジェクション分析
2.1 1、10-フェナントロリンとの錯形成を用いる鉄イオンの検出
2.2 1、10-フェナントロリン-鉄錯体との酸化還元反応に基づくアスコルビン酸の検出
2.3 過ヨウ素酸酸化反応に基づくカテコールアミン類の検出
3. マルチイオンセンシング
3.1 有機相のセグメントフローインジェクションとニュートラルイオノフォア型イオン対抽出メカニズムを利用したシーケンシャルイオンセンシング
3.2 3次元マイクロチャネルを用いるパラレルイオンセンシング
4. 液膜輸送システム
5. 界面重合と多層流形成に基づく高分子膜の作製と応用
6. 溶媒抽出とコバルト湿式分析
7. 気液二相流を利用したマイクロ濃縮法
8. イムノアッセイの集積化
8.1 マイクロチップを用いた生体関連物質の分析システム
8.2 固相化イムノアッセイ
8.3 イムノアッセイチップの作製
8.4 マイクロチップイムノアッセイ法
8.5 実サンプルを用いた大腸癌の血清診断
8.6 マルチチャネルイムノアッセイシステムの開発
8.7 マイクロ酵素免疫検定(ELISA)システム
8.8 マルチチャネルELISAチップを用いた自動分析装置
8.9 おわりに
9. まとめと展望

第7章 マイクロ化学合成システム(菊谷善国)
1. はじめに
2. 迅速な物質移動に基づく高効率マイクロ化学合成
2.1 安定な二相層流を利用した相間移動ジアゾカップリング反応
2.2 セグメントフローを利用した相間移動アルキル化反応
3. 迅速な熱移動に基づく高効率マイクロ化学合成
3.1 温度制御によるニトリル加水分解反応の高選択率化
3.2 レーザー加熱による高速温度制御
3.3 マイクロチャネル内温度分布測定技術
4. マイクロ化学合成システム構築へ向けた基盤研究
4.1 コンビナトリアル合成の基盤技術―2×2パラレル合成
4.2 大量合成の基盤技術―パイルアップリアクター
5. まとめと展望

第8章 細胞実験システムの集積化(佐藤記一、森島圭祐)
1. はじめに
2. マイクロ細胞実験システムのための基盤要素技術
2.1 細胞の接着
2.2 培地の供給
2.3 細胞への操作
3. マイクロ細胞解析システム
3.1 熱レンズ顕微鏡による細胞内物質分布の直接無標識計測
3.2 細胞外分泌物質の分析
4. 細胞の機能を利用したマイクロ生化学システム
4.1 マイクロバイオアッセイシステム
4.2 マイクロバイオリアクターシステム
5. バイオマイクロアクチュエーター
5.1 ハイドロゲルマイクロピラー
5.1.1 ピラーの駆動原理
5.1.2 ピラー製作方法
5.1.3 ハイドロゲルの合成
5.1.4 作製したハイドロゲルの観察
5.2 ハイドロゲルの表面修飾
5.3 細胞培養実験
5.4 心筋細胞の観察
5.5 心筋細胞を駆動源とする集積化マイクロ流体制御システムへの展開
6. まとめと展望

第9章 マイクロ電気化学システムの構築(金幸夫)
1. はじめに
2. 電極集積化マイクロ化学チップの作製
3. 電気化学応答
3.1 サイクリックボルタンメトリー
3.2 定電位電解
3.3 高感度測定に向けて
4. 分光電気化学への応用
4.1 分光電気化学法
4.2 電気化学-熱レンズ検出法
4.3 電位変調電気化学-熱レンズ検出法
5. まとめと展望

第10章 マイクロメソ空間の物理化学(火原彰秀)
1. はじめに
2. マイクロ液液界面化学
2.1 QELS法の原理と装置
2.2 界面吸着溶媒抽出過程
2.3 溶媒抽出過程の解析
3. メソ空間の化学
3.1 メソ空間の作製と液体導入
3.2 蛍光法
4. まとめと展望
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