商品コード: RLB223144

車載用リチウムイオン電池の高安全・評価技術

販売価格(税込): 88,000
ポイント: 800 Pt
メーカーURL: https://www.cmcbooks.co.jp/
■体裁:B5判・296頁
■発刊:2017年4月28日
■ISBNコード:978-4-7813-1242-2
■シーエムシー出版

【監修】
吉野彰・佐藤登

【刊行にあたって】
本書は2009年2月に刊行された『リチウムイオン電池の高安全技術と材料』、14年8月に刊行された『リチウムイオン電池の高安全・評価技術の最前線』に続く第3弾として企画された書籍である。中でも本書籍の特徴は、車載用に焦点を当てたところにある。前回の書籍を刊行した時点から3年が経過する中、自動車の電動化は一気に大きな波としてグローバルに伝播している。
2018年の米国ZEV(Zero Emission Vehicle)規制強化、同様に18 年から導入される中国のNEV(New Energy Vehicle)規制、そして21年から段階的に強化される欧州CO2規制が自動車の電動化を加速させている大きな要素となっている。

このような状況を鑑み、電動化に遅れをとってきた欧州自動車各社はドイツ勢を中心に、大規模な研究開発投資を行い、2018年から25年にかけて多種多様な製品を市場投入する計画を打ち出している。特に、18年に始まるZEV規制とNEV規制のカテゴリー枠として認められているプラグインハイブリッド車(PHEV)と電気自動車(EV)に集中する開発に取り組んでいる。これまで電動化をリードしてきた日本勢にとって、今後、欧州勢の競合車種はブランド力を武器に、市場と顧客開拓において大きなライバルとなってくる。

現状、車載用途ではリチウムイオン電池が多用されているが、電池メーカー間の競争力が問われつつある。性能、価格はもちろんのこと、安全性・信頼性に関する品質の重要性が増している中、電池の事故やリコールは電池各社のビジネスにとって致命傷になり得る。

そのため自動車メーカーや電池メーカーは、過酷な独自評価試験を基本に、安全性・信頼性確保に向けた入念な取り組みを行っている。また、2016年7月に発効した国連規則ECE R-100 Part.2の車載電池の安全性に関する認証が義務付けられたことで、安全性や信頼性は着実に向上していると言える。中国政府筋では、この国連規則を多少改訂した内容でGB規格化を進めている。しかし一方では、なお車載電池に起因する自動車の火災事故やリコールが起きているのも事実であることから、大容量電池における一層の安全性・信頼性の確立が急務となっている。

安全性に関する概論に始まり、安全性の高い電池開発、安全性を支えるリチウムイオン電池の各種材料、パッケージ技術、劣化評価解析、さらには市場分析についても解説した。実際の安全性・信頼性を評価する立場からは、試験法や評価結果についても詳細に記述されている。安全性を大きく向上させる全固体電池に関しても研究開発が進んでいる中、その現状と可能性についても採り上げたように、今後の実用化が期待されている。

本書が関連業界、研究開発機関の方々へのご参考になれば幸いです。

監修者代表 佐藤登(名古屋大学 未来社会創造機構 客員教授 / エスペック(株) 上席顧問 / 前・サムスンSDI(株) 常務)

【著者】
吉野彰 旭化成 
佐藤登 名古屋大学;エスペック
鳶島真一 群馬大学
高見則雄 東芝 
江守昭彦 日立化成
小林弘典 (国研)産業技術総合研究所
常山信樹 住友金属鉱山
武内正隆 昭和電工 
堀尾博英 森田化学工業 
西川聡 帝人 
山田一博 東レバッテリーセパレータフィルム 
河野公一 東レバッテリーセパレータフィルム 
薮内庸介 日本ゼオン 
脇坂康尋 日本ゼオン 
山下孝典 大日本印刷 
右京良雄 京都大学
末広省吾 住化分析センター 
新村光一 本田技術研究所 
野口実 本田技術研究所 
中村光雄 SUBARU 
梶原隆志 エスペック 
奥山 新 エスペック 
楠見之博 コベルコ科研 
辰巳砂昌弘 大阪府立大学 
林晃敏 大阪府立大学 
井手仁彦 三井金属鉱業 
所千晴 早稲田大学 
大和田秀二 早稲田大学 
薄井正治郎 JX金属 
稲垣佐知也 矢野経済研究所

【目次】

【第I編 総論】
第1章 リチウムイオン電池の安全性に関する一考察
1 はじめに
2 車載用リチウムイオン電池の市場動向
3 安全性に関する技術進歩
3.1 無機物層表面被覆
3.2 Thermal Runaway抑制技術の進歩
3.3 固体電解質電池の登場
4 安全性向上に関する今後の展開方向

第2章 車載用リチウムイオン電池の安全性概論
1 自動車業界間に課せられる環境規制と各社のビジネスモデル
2 欧州勢を中心としたEV動向と各社戦略
3 群雄割拠となるEVワールド
4 電池業界の動向と戦略
4.1 自動車業界と一体化した日本の電池業界
4.2 日韓電池業界の今後の課題
5 車載用電池の信頼性・安全性確保に関するビジネスモデル
5.1 各種電池の事故・リコールの歴史
5.2 受託試験ビジネスと認証事業による開発効率向上
6 日本の部材各社のビジネスモデル
7 次世代革新電池研究から電池事業ビジネスモデルまで

【第Ⅱ編 リチウムイオン電池の高安全化技術】
第3章 安全性の現状、課題と向上策
1 はじめに
2 リチウムイオン電池の市場トラブル例
2.1 事故原因の解析と対策品の安全性
2.2 電池の複数社調達(供給)
2.3 液漏れの課題
3 リチウムイオン電池の安全性評価の基本的な考え方
4 リチウムイオン電池の安全性試験
4.1 重要試験項目
4.2 内部短絡試験
5 完全放電状態の電池の熱暴走
6 まとめと今後の展開

第4章 安全、高出入力、長寿命性能に優れたチタン酸リチウム負極系二次電池
1 諸言
2 電池性能と安全性の課題
3 基本性能と安全性
3.1 LTO粒子のLi吸蔵・放出反応の速度論
3.2 LTO負極系二次電池の特長
3.3 安全技術
3.4 高出力型LTO/LMO系セル
3.5 高エネルギー型LTO/NCM系セル
4 今後の展望

第5章 電池制御システムによる高安全化技術
1 まえがき
2 電池制御アーキテクチャ
2.1 電池制御回路
2.2 電池制御専用IC
2.3 均等化回路
3 電池制御ソフト
3.1 ソフト構成
3.2 電池制御パラメータの定義
3.2.1 SOC
3.2.2 SOH
3.2.3 許容電流(電力)
4 高安全、高信頼システム
4.1 漏電検出
4.2 フェールセーフ
5 むすび

【第Ⅲ編 電池材料から見た安全性への取り組み】
第6章 電気自動車用リチウムイオン電池
1 はじめに
2 車載用LIBのセル設計
3 車載用LIBの材料構成
4 高性能化へ向けた材料開発の進展
5 安全性の視点からの考察
6 おわりに

第7章 正極活物質用非鉄金属原料確保の必要性
1 BEV伸長には非鉄金属原料確保が必須
2 ニッケルは大丈夫か?
3 BEV向け正極活物質用ニッケルをさらに確保するために
3.1 ニッケル資源の新規開発
3.2 電気ニッケルの使用
3.3 リサイクル推進
4 コバルトは危機的状態
5 コバルト対策は?
5.1 新規ニッケル鉱山開発からのバイプロダクトに期待
5.2 コバルト使用量の削減
5.2.1 NCAの優位性
5.2.2 LFPはコバルトを使用しないという点が魅力
5.2.3 PHV、HEVとの共存
6 マンガンは心配いらない
7 ここ数年間、リチウムは供給タイト
7.1 Big4の動向
7.2 新興勢力
8 おわりに

第8章 負極材料
1 はじめに:昭和電工の黒鉛系Liイオン二次電池(LIB)関連材料紹介
2 炭素系LIB負極材料の開発状況
2.1 LIB負極材料の種類と代表特性
2.2 LIB要求項目
2.3 各種炭素系LIB負極材料の特性
3 人造黒鉛負極材のサイクル寿命、保存特性、入出力特性の改善
3.1 人造黒鉛SCMG®-ARの特徴
3.2 人造黒鉛SCMG®(AGr)、表面コート天然黒鉛(NGr)の耐久試験後の解析
3.3 人造黒鉛SCMG®の急速充放電性(入出力特性)改良
3.4 人造黒鉛SCMG®のさらなる高容量化:Si黒鉛複合負極材の開発
4 VGCF®のLIB負極用導電助剤としての状況

第9章 電解質系
1 はじめに
2 中国における電気自動車と電解質の市場動向
3 電解質の種類
3.1 LiPF6
3.2 LiBF4
3.3 LiTFSI
3.4 LiFSI
3.5 LiPO2F2
4 電解質に対する顧客の要求
5 中国における原材料調達
6 車載用の電池と電解質
7 電解質の安全性について
8 中国における電池及び電解質事業の実態
9 北米及び欧州における電池及び電池材料
10 電気自動車市場の真実
11 まとめ

第10章 セパレータ
1 はじめに
2 ポリオレフィン微多孔膜とシャットダウン機能
3 耐熱加工ポリオレフィン微多孔膜
4 不織布セパレータ
5 接着層加工ポリオレフィン微多孔膜
6 おわりに

第11章 高エネルギー密度・高入出力化に向けたセパレータ材料の安全性への取り組み
1 リチウムイオン二次電池とその動向
1.1 リチウムイオン二次電池の登場
1.2 LIBのセル種とその用途拡大
1.3 LIBの高エネルギー密度化と高入出力化
2 LIBセパレータの役割
2.1 第1の役割「極板間の電子的絶縁性」
2.2 第2の役割「極板間のイオン伝導性」
2.3 第3の役割「LIB長期寿命への寄与」
2.4 第4の役割「高LIB安全化への寄与」
3 LIBセパレータの製造プロセス
4 LIBセパレータの製品設計
4.1 高エネルギー密度化・高入出力密度化に向けた製品設計
4.2 高安全化に向けた製品設計
5 LIBセパレータの技術動向
5.1 高強度化/薄膜化、圧縮性制御(機械的性質関連)
5.2 シャットダウン(閉孔)の低温化
5.3 熱破膜(メルトダウン)の高温化
5.4 高電圧化対応
5.4.1 セパレータ表面の酸化現象
5.4.2 セパレータの酸化抑制
5.5 細孔構造制御
5.6 その他技術動向
6 次世代に向けて
6.1 デンドライト成長検出技術
6.2 評価技術の高度化
7 最後に

第12章 機能性バインダー
1 はじめに
2 リチウムイオン二次電池用機能性バインダー
3 負極用バインダー
3.1 車載用負極バインダーに求められる特性
3.2 長期繰り返し使用における電極の膨らみへの対応
3.3 シリコン系活物質への対応
4 セパレータ関連材料
4.1 LIB内への耐熱層の導入
4.2 セパレータの耐熱収縮性向上
4.3 セラミック層の配置場所による比較
5 おわりに

第13章 パッケージングの技術と電池の安全性
1 DNPバッテリーパウチの歴史
2 バッテリーパウチの安全性
3 製品へ要求される性能
3.1 成形性
3.2 耐電解液性
3.3 水蒸気バリア性
3.4 気密性
3.5 絶縁性
3.6 耐熱性/耐寒性
4 ラミネートフィルム生産工程と品質
5 電池評価技術
6 バッテリーパウチの課題

【第Ⅳ編 リチウムイオン電池の解析事例】
第14章 リチウムイオン電池の高温耐久性と安定性
1 はじめに
2 電池特性評価
3 サイクル試験による特性変化および解析
3.1 サイクル試験による特性変化と電気化学的解析
3.2 電極評価・解析
4 Mg置換による(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)の安定化
5 まとめ

第15章 リチウムイオン電池の高性能化に向けた分析評価技術
1 はじめに
2 電極構造の数値化
2.1 概要
2.2 電極内の空隙構造
2.3 導電助剤分散・導電性ネットワーク
2.4 バインダの偏在・剥離強度
3 三次元空隙ネットワーク解析によるリチウムイオン電池電極の評価法
3.1 概要
3.2 実験方法
3.3 結果と考察
4 充放電中の電極活物質の構造変化を知るためのその場分析
4.1 概要
4.2 低温下におけるリチウムイオン電池のin situ分析
4.2.1 概要
4.2.2 実験方法
4.2.3 結果と考察
4.3 電極断面のRamanイメージング
4.3.1 概要
4.3.2 実験方法
4.3.3 結果と考察
5 複合的分析手法によるLIB劣化原因の解析
5.1 概要
5.2 実験方法
5.3 結果と考察
6 まとめ

【第Ⅴ編 安全性評価技術】
第16章 自動車メーカーから見る安全性評価技術
1 はじめに
2 車両に搭載される電池の特徴
3 車両に搭載される電池の安全性
4 各国の安全性評価基準
4.1 SAE J2464
4.1.1 一般試験指針
4.1.2 有害物監視
4.1.3 機械的試験
4.1.4 熱的非定常試験
4.1.5 電気的非定常試験
4.2  GB/T 31485-2015
4.2.1 GB/T 31485-2015セル安全試験
4.2.2 GB/T 31485–2015電池モジュール安全試験
4.2.3 UN R100 Part2
4.3 UN38.3
5 車両搭載電池の安全性における今後の展望

第17章 次世代自動車におけるリチウムイオン二次電池の使い方と評価
1 はじめに
2 電動車両と蓄電デバイス
3 電動車両向け蓄電システムの出力/容量比
4 車種ごとに異なる使い方とマネージメント
4.1 BEV(電気自動車)
4.1.1 充放電パターン
4.1.2 REESSのエネルギマネージメント(BEV)
4.2 HEV(ハイブリッド自動車)
4.2.1 充放電パターン
4.2.2 REESSのエネルギマネージメント(HEV)
4.3 PHEV(プラグインハイブリッド自動車)
4.3.1 充放電パターン
4.3.2 REESSのエネルギマネージメント(PHEV)
5 電池劣化の車両への影響
6 自動車用蓄電デバイスの評価
6.1 REESSの試験標準
6.1.1 ISO12405-1
6.1.2 ISO12405-2
6.1.3 ISO12405-3
6.2 REESSの安全性基準
6.3 その他の評価試験
7 終わりに

第18章 安全性評価の認証
1 はじめに
2 安全性評価の重要性
3 国連協定規則
4 UN ECE R100.02 PartⅡについて
5 UN ECE R100.02 PartⅡの安全性試験
5.1 Vibration(振動)[附則8A]
5.2 Thermal shock and cycling(熱衝撃およびサイクル試験)[附則8B]
5.3 Mechanical shock(メカニカルショック)[附則8C]
5.4 Mechanical integrity(メカニカルインテグリティー)[附則8D]
5.5 Fire resistance(耐火性)[附則8E]
5.6 External short circuit protection(外部短絡保護)[附則8F]
5.7 Overcharge protection(過充電保護)[附則8G]
5.8 Over-discharge protection(過放電保護)[附則8H]
5.9 Over-temperature protection(過昇温保護)[附則8I]
6 認可取得までのプロセス
7 おわりに

第19章 安全性評価の受託
1 はじめに
2 外部短絡試験における温度依存性の検証
2.1 自動車用二次電池の安全性試験における新たな技術課題
2.2 環境温度を考慮した安全性試験の現状
2.3 環境温度を制御した外部短絡試験の事例
2.4 試験結果と考察
2.5 その他
3 圧壊試験における圧壊方法の検証
3.1 試験条件・治具の違いの検証事例
3.2 試験結果と考察
4 失活処理のノウハウ
4.1 試験後の失活処理が必要なケース
4.2 失活方法事例
4.2.1 エネルギー放出系
4.2.2 破壊系
4.3 失活方法の選択例
5 おわりに

第20章 安全性評価の受託試験機能
1 はじめに
2 受託試験機関の目的、必要性
3 受託試験機関の状況
4 受託試験の概要
5 安全性評価試験の実施例
5.1 安全性評価試験設備
5.2 安全性試験時の発生ガス分析
5.2.1 発生ガスの回収および分析手法
5.2.2 過充電試験時のリアルタイム発生ガス分析
5.3 リチウムイオン電池の安全性試験シミュレーション
6 おわりに

【第Ⅵ編 次世代電池技術】
第21章 全固体電池
1 はじめに
2 無機固体電解質の特性
3 全固体電池の作動特性
4 おわりに

第22章 車載用次世代電池としての全固体電池の展望
1 はじめに
2 ポストリチウムイオン電池
3 全固体電池
4 三井金属における硫化物系全固体電池材料の開発
5 硫化物系固体電解質
6 硫化物系全固体電池の電池特性
7 硫化物系全固体電池の展望
8 層状正極を用いた全固体電池の高充電圧電池特性
9 高電位正極LNMOを用いた全固体電池の高充電圧電池特性
10 全固体電池の特長を活かしたシリコン負極の電池特性
11 おわりに

【第Ⅶ編 リサイクル】
第23章 リチウムイオン電池のリサイクル技術
1 はじめに
2 加熱プロセスにおけるCo等の形態変化
3 物理選別によるCo成分の濃縮
4 おわりに

【第Ⅷ編 市場展望】
第24章 リチウムイオン電池及び部材市場の現状と将来展望
1 概要
2 車載用LiB市場動向
3 主要四部材動向
4 正極材動向
5 負極材
6 電解液
7 セパレーター
8 LiB用主要四部材国別動向
9 今後の展望
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